辞典

 国語辞典や漢和辞典もいまだに本棚の隅に存在感なく置かれたままになっている。疑問があるとすぐにググる、だからどちらの辞典も引くことはない。検索エンジンを使うのもいいが、ヒットするものに傾向があるように思う。何やら順位や優劣を付けられて示されるようで、価値観を押し付けられている気さえする。その点、紙ベースの辞典は気兼ねがない。序列があるとすれば、50音順だったり、画数順であったりで、引くときの利便性だけの問題だ。何の疑問も持たずにこの2冊の辞典を使っていたが、書棚に並ぶ辞典を見て、はたと考えた。英和辞典、仏和辞典、漢和辞典、とこの並びからすると、英語を日本語に、フランス語を日本語に、漢語を日本語に訳す辞典と解釈できる。今更ながらえっと思って漢和辞典を開いてみた。そこは辞典である、明解に書いてあった。漢字や漢字で表されたことばから、現代日本語を検索するものに近く、漢字引きの国語辞典である、これが漢和辞典だと。すなわち、どちらも国語辞典でその引き方が異なるだけと言える。
 そこで、英語の辞典はもちろんアルファベットの順に並んでいて、英和辞典の場合英語のスペルの隣に発音記号が書かれている。私はずっとこれは日本人のために日本語にない発音を正確に表示する意味でそうなっていると思っていた。英語を母国語としている人でもすべての語句を知り尽くしている訳ではない。知らない語句があれば辞典を引く。スペルや発音を辞典で確認することだってある。そのネイティブの人の使う辞典にもやはり発音記号があるのがわかった。簡単な例では、「a」のみの項ではそこに読み方、発音が書いてあるが、発音記号で「ア」と「エイ」と書いてあって、悲しいかな、英語で「a」にどんな発音をさせるかは、発音記号でしか示せないようだ。別の言い方をすれば、アルファベットだけで、英語という言語の辞典が完結しない。発音記号も含めて辞典と言える。
 中国語の場合はもっと複雑なようで、辞典を引くときは発音を表すローマ字のようなアルファベットを使って表記される文字によって引く。多分これがピン音(ピンイン)というものだと思う。父が中国語を勉強していたので、中国語の辞典を覗き込んだことがある。そのときはローマ字が並んでいて、これが中国語辞典なのかと驚いたことがある。中国の地名は対外的にこのピン音で表すことになっている。例えば北京はBeijing、上海はShanghai、香港はHong-Kong、など。余談だが、なぜ日本人は「香港」を「ホンコン」、「上海」を「シャンハイ」と読めるのだろう?これもちょっと不思議だ。日本語読みではないのだが。話を戻せば、中国では漢字を覚えるより先にローマ字に似たピン音を覚えるそうだが本当だろうか。これがわからなければ辞典が引けないとなれば、覚えるしかない。ピン音なるものが、中国語の辞典の編纂に深く係わっていることに驚かざるを得ない。それは英語の辞典における発音記号もしかりではあるのだけど。
 では、索引のことを整理すると、中国語では発音から引くことができる。英語では文字(スペル)から引くことができる。中国語辞典には漢字で引く所謂日本語の漢和辞典に相当するようなものが一般的にないらしい。英語では発音から引くことができる辞典はない。
 と考えると、中国語で漢字の読み方を調べるのにはどうするのだろう。英語で発音はわかるがスペルがわからない場合の意味の調べ方はどうするのだろう。疑問は残る。
 それにしても辞典の中で発音記号がなくてはならないとは日本語では考えられない。国語辞典にしろ、漢和辞典にしろ、日本語以外の記号が書かれていて、それがないと辞典として成り立たないものはないと言える。因みに手元にある辞典を見ても、漢字と仮名だけで編纂されていて、日本語の世界が完結されている。改めて手垢の付いたセピア色の辞典を開くとたまには開いてやりたいと愛おしくも感じる。

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